はじめに (対象読者・この記事でわかること)

この記事は、プログラミング初心者の方や、Arduinoを使った電子工作に興味はあるけれど、回路図、特にスイッチ回路の図が難しくて理解できないと感じている方を対象としています。Arduino IDEの基本的な使い方に触れつつ、スイッチをArduinoに接続する際の回路図の読み解き方、そして実際に簡単なスイッチ回路を組んでみる方法までを、分かりやすく解説します。この記事を読むことで、Arduinoのスイッチ回路図の基本的な記号の意味が理解できるようになり、簡単なスイッチ回路を自分で設計・実装できるようになることを目指します。

前提知識

この記事を読み進める上で、以下の知識があるとスムーズです。

  • Arduino IDEの基本的な操作: プログラムの書き込みやシリアルモニタの表示など、Arduino IDEの基本的な使い方が分かっていると理解が深まります。
  • 電子部品の基本的な名称: 抵抗、LED、ジャンパー線など、一般的な電子部品の名前を知っていると、回路図がより理解しやすくなります。

Arduinoのスイッチ回路図、なぜ分かりにくい?基本要素を解説!

「Arduinoのスイッチ回路図って、なんだか複雑で線がいっぱいあって分かりにくい…」そう感じている方も多いのではないでしょうか。特に、スイッチというシンプルな部品なのに、回路図になると途端に難しく見えてしまうことがあります。

まず、Arduinoの回路図でよく登場する基本的な要素について確認しましょう。

  • Arduinoボード: マイコンボード本体です。ピン(GPIOピン)が重要で、ここに外部の部品を接続します。
  • 電源 (GND, 5Vなど): 回路に電気を供給するための端子です。GNDは「グラウンド」、つまり電気の基準となるマイナス(0V)に相当します。5VはArduinoから出力される5ボルトの電源です。
  • スイッチ: 回路のON/OFFを切り替える部品です。様々な種類がありますが、ここでは最も一般的なタクトスイッチ(プッシュボタン)を想定します。
  • 抵抗 (Resistor): 電流の流れを制限する部品です。Arduinoでは、プルアップ抵抗やプルダウン抵抗として使われることが多いです。
  • LED: 光る部品です。スイッチの状態を確認するために使います。
  • ジャンパー線: 部品間やArduinoのピンを接続するための配線材です。

回路図でこれらの要素がどのように表現されるかを知ることが、理解への第一歩です。例えば、スイッチは単なる「ON/OFF」だけでなく、接続されているピンの状態を変化させる役割を持ちます。この「状態の変化」をArduinoが読み取るために、回路図ではいくつかの「お約束」が存在するのです。

なぜ抵抗が必要?プルアップ抵抗とプルダウン抵抗

スイッチ回路でよく見かけるのが「抵抗」です。特に、「プルアップ抵抗」や「プルダウン抵抗」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これらは、スイッチが押されていない状態(OFF)でも、Arduinoの入力ピンが「不定」な状態にならないようにするために非常に重要です。

  • プルアップ抵抗: 入力ピンをVCC(Arduinoでは5V)に接続しておき、スイッチが押されたときにGNDに接続するようにします。スイッチがOFFのときはHIGH(5V)の状態を保ちます。
  • プルダウン抵抗: 入力ピンをGNDに接続しておき、スイッチが押されたときにVCC(5V)に接続するようにします。スイッチがOFFのときはLOW(0V)の状態を保ちます。

Arduino Unoなどのマイコンには、内蔵プルアップ抵抗機能があります。これを活用すると、外部に抵抗を接続する手間を省くことができます。しかし、回路図で「抵抗」が明示されている場合は、その意図を理解することが大切です。

実践!簡単なスイッチ回路の構築とArduinoスケッチ

ここからは、実際に簡単なスイッチ回路を構築し、Arduinoでその入力を読み取る方法を解説します。Arduino IDEを使ったプログラミングも交えるので、手を動かしながら学んでいきましょう。

準備するもの

  • Arduino Uno (または互換ボード)
  • タクトスイッチ (プッシュボタン)
  • 抵抗 (10kΩ程度。内蔵プルアップ抵抗を使う場合は不要)
  • LED (任意。スイッチの状態を視覚的に確認するため)
  • ジャンパー線
  • ブレッドボード (配線を簡単にするため)
  • USBケーブル (ArduinoとPCを接続するため)

回路図の作成と配線

まずは、最も基本的な「スイッチの状態を読み取る」回路を考えてみましょう。ここでは、Arduinoのデジタル入力ピンにスイッチを接続し、スイッチが押されたらLEDを点灯させる、というシンプルな構成にします。

ケース1:プルアップ抵抗を外付けする場合

この回路では、Arduinoのデジタル入力ピン(例:ピン2)にタクトスイッチを接続します。スイッチの一方の端子はデジタル入力ピンに、もう一方の端子はGNDに接続します。そして、デジタル入力ピンと5Vの間に10kΩの抵抗(プルアップ抵抗)を接続します。

[Arduino]
  5V --- [抵抗 10kΩ] --- [スイッチ] --- GND
          |                 |
          +-----------------[デジタル入力ピン 2]

配線手順:

  1. Arduinoの5Vピンとブレッドボードの電源ラインをジャンパー線で接続します。
  2. ArduinoのGNDピンとブレッドボードのGNDラインをジャンパー線で接続します。
  3. タクトスイッチをブレッドボードに挿します。スイッチの脚は4本ありますが、隣り合った2本ずつが導通します。
  4. タクトスイッチの片側の脚(例えば、左上の脚)を、Arduinoのデジタル入力ピン2に接続します。
  5. タクトスイッチのもう片方の脚(例えば、右上の脚)をGNDラインに接続します。
  6. プルアップ抵抗を用意します。抵抗の一方の脚を、デジタル入力ピン2とタクトスイッチの脚の接続箇所(またはデジタル入力ピン2の近く)に接続します。
  7. 抵抗のもう一方の脚を、5Vラインに接続します。
  8. (任意) LEDを点灯させる場合:
    • LEDのアノード(長い方の脚)をArduinoのデジタル出力ピン(例:ピン13)に接続します。
    • LEDのカソード(短い方の脚)に220Ω〜1kΩ程度の抵抗を接続します。
    • その抵抗のもう一方の脚をGNDラインに接続します。

ケース2:Arduinoの内蔵プルアップ抵抗を利用する場合

Arduino Unoには、デジタル入力ピンに内蔵プルアップ抵抗を有効にする機能があります。これを使うと、外付けの抵抗が不要になり、配線がよりシンプルになります。

[Arduino]
                   [スイッチ] --- GND
                    |
  [デジタル入力ピン 2] -------------

配線手順:

  1. ArduinoのGNDピンとブレッドボードのGNDラインをジャンパー線で接続します。
  2. タクトスイッチをブレッドボードに挿します。
  3. タクトスイッチの片側の脚を、Arduinoのデジタル入力ピン2に接続します。
  4. タクトスイッチのもう片方の脚をGNDラインに接続します。
  5. (任意) LEDを点灯させる場合: ケース1と同様に、デジタル出力ピン(例:ピン13)とGNDの間にLEDと抵抗を接続します。

Arduinoスケッチ(プログラム)の作成

次に、これらの回路でスイッチの状態を読み取り、LEDを制御するArduinoスケッチを作成します。

ケース1:プルアップ抵抗を外付けした場合のスケッチ

C++
const int switchPin = 2; // スイッチを接続したデジタル入力ピン const int ledPin = 13; // LEDを接続したデジタル出力ピン void setup() { pinMode(switchPin, INPUT); // スイッチピンを入力モードに設定 pinMode(ledPin, OUTPUT); // LEDピンを出力モードに設定 Serial.begin(9600); // シリアル通信を開始 (デバッグ用) } void loop() { int switchState = digitalRead(switchPin); // スイッチの状態を読み取る // switchStateがHIGH (5V) のとき、スイッチは押されていない // switchStateがLOW (0V) のとき、スイッチは押されている if (switchState == LOW) { // スイッチが押されたら (LOWになる) digitalWrite(ledPin, HIGH); // LEDを点灯 Serial.println("Switch PRESSED!"); } else { // スイッチが押されていなければ (HIGH) digitalWrite(ledPin, LOW); // LEDを消灯 Serial.println("Switch RELEASED."); } delay(50); // 短い遅延 (チャタリング防止のため) }

解説:

  • switchPinledPin に、それぞれスイッチとLEDを接続したピン番号を定義しています。
  • setup() 関数内で、pinMode() を使って各ピンのモードを設定します。INPUT は入力、OUTPUT は出力です。
  • loop() 関数が繰り返し実行されます。
  • digitalRead(switchPin) で、スイッチピンの状態(HIGHまたはLOW)を読み取ります。プルアップ抵抗があるため、スイッチがOFFのときはHIGH、ONのときはLOWになります。
  • if 文で、読み取った switchStateLOW かどうかを判定し、digitalWrite() でLEDの状態をHIGH(点灯)またはLOW(消灯)に切り替えます。
  • Serial.begin(9600) でシリアル通信を開始し、Serial.println() でPCのシリアルモニタにメッセージを表示できるようにしています。これはデバッグに役立ちます。
  • delay(50) は、スイッチの接点がバタつく「チャタリング」と呼ばれる現象を軽減するためのものです。

ケース2:Arduinoの内蔵プルアップ抵抗を利用する場合のスケッチ

C++
const int switchPin = 2; // スイッチを接続したデジタル入力ピン const int ledPin = 13; // LEDを接続したデジタル出力ピン void setup() { // 内蔵プルアップ抵抗を有効にして入力モードに設定 pinMode(switchPin, INPUT_PULLUP); pinMode(ledPin, OUTPUT); // LEDピンを出力モードに設定 Serial.begin(9600); // シリアル通信を開始 (デバッグ用) } void loop() { int switchState = digitalRead(switchPin); // スイッチの状態を読み取る // switchStateがHIGH (5V) のとき、スイッチは押されていない // switchStateがLOW (0V) のとき、スイッチは押されている (GNDに接続されるため) if (switchState == LOW) { // スイッチが押されたら (LOWになる) digitalWrite(ledPin, HIGH); // LEDを点灯 Serial.println("Switch PRESSED!"); } else { // スイッチが押されていなければ (HIGH) digitalWrite(ledPin, HIGH); // LEDを消灯 Serial.println("Switch RELEASED."); } delay(50); // 短い遅延 (チャタリング防止のため) }

解説:

setup() 関数内の pinMode(switchPin, INPUT_PULLUP); の部分が、ケース1と大きく異なります。これにより、外部に抵抗を接続せずに内蔵プルアップ抵抗が有効になり、スイッチがOFFのときはHIGH、ONのときはLOWになります。プログラムのロジックはケース1とほぼ同じです。

デバッグと確認

  • Arduino IDEでスケッチを書き込んだら、シリアルモニタを開いてみましょう(ツール > シリアルモニタ)。スイッチを押したり離したりするたびに、"Switch PRESSED!" や "Switch RELEASED." と表示されるはずです。
  • LEDを接続した場合は、スイッチの状態に応じて点灯・消灯するか確認してください。

その他のスイッチ回路

上記は最も基本的な例ですが、スイッチ回路には他にも様々な構成があります。

  • 複数のスイッチ: 複数のスイッチを個別に読み取る場合は、それぞれ異なるデジタル入力ピンに接続し、スケッチでも個別に digitalRead() を行います。
  • ディップスイッチ: 複数のON/OFFスイッチが一体になったものです。各スイッチを個別のピンに接続して制御します。
  • モーメンタリスイッチとオルタネイトスイッチ: 今回は押している間だけONになるモーメンタリスイッチ(タクトスイッチ)を想定しましたが、ON/OFFを切り替えるオルタネイトスイッチもあります。用途に応じて使い分けます。

回路図は、これらの部品や接続方法を視覚的に表現したものです。記号の意味と、それぞれの部品が果たす役割を理解することが、回路図を読み解く鍵となります。

まとめ

本記事では、Arduinoのスイッチ回路図が分かりにくいと感じる方のために、基本的な電子部品の記号、プルアップ/プルダウン抵抗の役割、そしてArduinoの内蔵プルアップ抵抗を活用した実践的なスイッチ回路の構築方法とArduinoスケッチの作成方法について解説しました。

  • 回路図の基本要素: Arduinoボード、電源、スイッチ、抵抗、LEDなどの記号と役割を理解することが重要です。
  • プルアップ/プルダウン抵抗: 入力ピンを安定させるために必要であり、Arduinoでは内蔵機能も利用できます。
  • 実践的な回路構築: ブレッドボードとジャンパー線を使えば、初心者でも簡単に回路を組むことができます。
  • Arduinoスケッチ: digitalRead() でスイッチの状態を読み取り、digitalWrite() でLEDなどを制御します。INPUT_PULLUP は配線をシンプルにする強力な機能です。

この記事を通して、Arduinoのスイッチ回路図に対する漠然とした不安を解消し、実際に手を動かして電子工作を楽しむ第一歩を踏み出していただけたなら幸いです。今後は、より複雑なセンサーやモジュールとの連携、複数のスイッチを使ったインタラクティブな作品作りなど、さらなる発展的な内容についても記事にする予定です。

参考資料