はじめに (対象読者・この記事でわかること)

この記事は、新たにJava開発を始める方、既存のJavaプロジェクトでどのJDKバージョンを使えば良いか迷っている方、あるいは最新のJava動向について情報収集したいJava開発者を対象にしています。Javaは長年広く利用されているプログラミング言語ですが、そのバージョンアップサイクルやJDKディストリビューションは複雑になりがちです。

この記事を読むことで、Javaのバージョン体系、LTS(Long-Term Support)と非LTSの違い、プロジェクトの要件に応じたJDK選択の具体的なポイント、そして主要なJDKディストリビューションの選び方がわかります。これにより、あなたのJava開発環境を自信を持って構築・運用できるようになるでしょう。

前提知識

この記事を読み進める上で、以下の知識があるとスムーズです。 * Javaの基本的なプログラミング知識 (簡単なコードを読める、書けるレベル) * コマンドラインツールの基本的な操作 (環境変数の設定など)

JavaのリリースサイクルとLTS/非LTSの理解

Javaは、Sun Microsystemsによって開発され、現在はOracleが主要な開発を主導しているプログラミング言語です。Java SE (Standard Edition) は、かつて数年おきにメジャーバージョンがリリースされていましたが、2017年のJava 9以降、6ヶ月ごとの高速リリースサイクルへと移行しました。この変更により、開発者はより頻繁に新しい機能を利用できるようになりましたが、同時にどのバージョンを選択すべきかという課題も生じました。

ここで重要になるのが、「LTS (Long-Term Support)」と「非LTS」という概念です。 * LTS (Long-Term Support) バージョン: 特定のバージョンに対して、長期的なサポートが提供されるリリースです。エンタープライズシステムや本番環境での利用に適しており、安定性とセキュリティパッチが長期間にわたって保証されます。現在の主要なLTSバージョンには、Java 8, Java 11, Java 17, Java 21などがあります。これらのバージョンは、数年ごとにリリースされる傾向があります。 * 非LTS バージョン: 6ヶ月ごとにリリースされる通常バージョンで、次のバージョンがリリースされるまでの間だけサポートされます。最新の機能や実験的な機能をいち早く試したい開発者向けですが、頻繁なバージョンアップと検証が必要となるため、本番環境での利用は慎重に検討する必要があります。

プロジェクトの安定性を重視するならLTS、最新機能の導入や技術検証を重視するなら非LTSという選択が基本的な考え方になります。

適切なJDKバージョンを選択するためのロードマップ

Java開発において最適なJDKバージョンを選択することは、プロジェクトの安定性、パフォーマンス、そして将来的なメンテナンスに大きく影響します。ここでは、具体的な手順と考慮事項を掘り下げていきます。

1. プロジェクトの種類と要件を明確にする

まず、現在取り組んでいる、またはこれから取り組むプロジェクトの性質を理解することが最も重要です。

  • 新規プロジェクトか、既存プロジェクトか?

    • 新規プロジェクトの場合: 最新のLTSバージョン (現在であればJava 17やJava 21) を選択するのが最も一般的な推奨事項です。これにより、最新の言語機能やAPIを利用でき、長期的なサポートを受けられます。
    • 既存プロジェクトの場合: 既に特定のJDKバージョン (例: Java 8, Java 11) で稼働している場合は、安易なバージョンアップは避け、互換性テストや移行コストを考慮する必要があります。可能であれば、次のLTSバージョンへの移行計画を立てると良いでしょう。
  • フレームワークやライブラリのサポート状況を確認する

    • 使用予定の主要なフレームワーク (Spring Boot, Jakarta EE/Eclipse MicroProfileなど) やライブラリが、どのJDKバージョンをサポートしているかを確認します。特に古いバージョンのフレームワークでは、最新のJDKに未対応の場合があります。例えば、Spring Boot 3.x系はJava 17以降が必須です。
    • サードパーティライブラリも同様に、利用したいJDKバージョンで問題なく動作するかを確認することが重要です。
  • クラウドプラットフォームのサポート状況を確認する

    • AWS Elastic Beanstalk, Google Cloud App Engine, Azure App Serviceなどのクラウドサービスを利用する場合、各プラットフォームがどのJavaバージョンをサポートしているかを確認しましょう。最新のLTSバージョンが利用可能なことが多いですが、場合によっては特定の古いLTSバージョンのみが利用できることもあります。
  • 商用利用か、個人利用か、コミュニティ向けか?

    • 商用利用の場合は、安定性と長期サポートが不可欠なため、LTSバージョンが基本となります。また、JDKディストリビューションのライセンスについても後述します。個人開発や実験的なプロジェクトであれば、非LTSバージョンで最新機能を試すのも良いでしょう。

2. LTSバージョンを優先的に検討する

多くの商用プロジェクトや長期運用が求められるシステムでは、LTSバージョンが強く推奨されます。

  • 主要なLTSバージョンとその特徴

    • Java 8: 未だに多くのレガシーシステムで利用されており、安定性は抜群です。しかし、言語機能は古く、公式サポートも終了しています(商用利用の場合は有償サポートが必要)。新規プロジェクトでの選択は推奨されません。
    • Java 11: Java 8の次にリリースされたLTSバージョンで、モジュールシステム (JPMS) やHTTP Client APIなどの機能が追加されました。多くの企業がJava 8からJava 11へ移行し、現在も広く利用されています。
    • Java 17: Java 11の次にリリースされたLTSバージョンで、テキストブロック、Records、Sealed Classesなど、開発効率を高める多くの新機能が追加されました。現在の新規プロジェクトでは、最も有力な選択肢の一つです。
    • Java 21: 2023年9月にリリースされた最新のLTSバージョンで、バーチャルスレッド (Project Loom) が正式導入されるなど、大きな進化を遂げています。まだ採用はこれからですが、今後の主流となる可能性が高いです。
  • LTSバージョンのサポート期間と移行計画

    • 各LTSバージョンには、それぞれ異なるサポート期間が設定されています。Oracle JDKの場合、無償サポートは比較的短く、その後は有償サポートが必要となることが多いです。OpenJDKベースのディストリビューション(後述)では、ベンダーによって異なる長期サポートが提供されます。
    • プロジェクトのライフサイクルに合わせて、次のLTSバージョンへの移行計画を立てておくことが賢明です。例えば、Java 11を利用しているなら、Java 17またはJava 21への移行を視野に入れる、といった形です。

3. 最新の非LTSバージョンを使用するケース

非LTSバージョンは、特定の目的において非常に有用です。

  • 最新機能の検証や個人プロジェクト

    • Javaの最新の言語機能やAPIをいち早く試したい場合、非LTSバージョンは最適です。例えば、LTSに先行してリリースされるプレビュー機能やインキュベーターモジュールなどを試すことができます。
    • 小規模な個人プロジェクトや趣味のコードであれば、頻繁なバージョンアップの負担も小さく、最新技術に触れる良い機会となります。
  • 短期間での開発サイクル

    • プロジェクトが短期間で完結し、本番リリース後すぐにメンテナンスが不要になるような場合、最新の非LTSバージョンを選択することもあり得ます。しかし、これは稀なケースであり、一般的にはLTSが推奨されます。

4. 主要なJDKディストリビューションとその選択

「JDK」はJava開発キットの総称ですが、実際に利用する際には様々なベンダーが提供する「ディストリビューション」を選択することになります。それぞれの特徴とライセンスを理解することが重要です。

  • Oracle JDK

    • Oracleが提供する公式のJDKディストリビューションです。過去には無償利用が可能でしたが、Java 11以降、商用利用や長期サポートには有償ライセンスが必要となりました。個人利用や開発・テスト環境での利用は引き続き無償の場合もありますが、ライセンス条件が複雑なため、確認が必要です。
    • 安定性や品質は高いですが、ライセンスコストがネックとなる場合があります。
  • OpenJDKベースのディストリビューション

    • 多くのベンダーがOpenJDKプロジェクトの成果物に基づき、それぞれ独自のJDKディストリビューションを提供しています。これらは多くの場合、商用利用を含めて無償で利用でき、長期サポートも提供されることがあります。
    • Adoptium (Temurin): Eclipse Foundationが提供するOpenJDKビルド。最も広く利用されている無償のJDKディストリビューションの一つで、幅広いプラットフォームで利用可能です。商用利用を含め、完全にオープンソースです。
    • Azul Zulu: Azul Systemsが提供するOpenJDKビルド。無償版と有償サポート付きのEnterprise版があります。多様なプラットフォーム(組み込み、ARMなど)に対応しています。
    • Amazon Corretto: Amazonが提供するOpenJDKビルド。Amazon内部でも広く利用されており、長期サポートが提供されます。AWS環境での利用はもちろん、オンプレミスでも利用可能です。
    • Red Hat OpenJDK: Red Hatが提供するOpenJDKビルド。RHEL(Red Hat Enterprise Linux)環境での利用に最適化されています。
    • GraalVM: Oracleが開発する高性能な多言語実行環境。従来のJDKとしても利用できますが、特にAhead-Of-Time (AOT) コンパイルによる高速な起動や低メモリ消費が特徴です。ネイティブイメージ生成など、特殊な要件がある場合に検討します。

ハマった点やエラー解決 (ディストリビューション選択の落とし穴)

過去にJava開発者がよく直面した問題の一つが、Oracle JDKのライセンス変更です。Java 8までは無償で広く利用されていましたが、Java 11以降のライセンス変更により、多くの企業が商用利用において有償サポート契約を求められる事態になりました。この変化を知らずにOracle JDKを使い続けてしまい、後にライセンス違反のリスクに直面するケースがありました。

解決策

この問題の解決策は、OpenJDKベースのディストリビューションへの移行です。特に新規プロジェクトであれば、最初からAdoptium (Temurin) やAmazon Correttoのような完全に無償で利用できるディストリビューションを選択するのが最も安全で推奨されます。既存プロジェクトでOracle JDKを利用している場合も、速やかにOpenJDKベースのディストリビューションへの移行を検討し、互換性テストを実施することをお勧めします。これらのディストリビューションは、Oracle JDKとほぼ同等の機能とパフォーマンスを提供し、かつ長期サポートも利用できるため、安心して利用できます。

まとめ

本記事では、Java開発者が適切なJDKバージョンを選択するための具体的な考慮事項と、主要なJDKディストリビューションについて解説しました。

  • LTSバージョンを基本に、プロジェクト要件を明確にする: 新規プロジェクトではJava 17やJava 21といった最新LTSバージョンを検討し、既存プロジェクトでは互換性を考慮しつつ計画的な移行を目指しましょう。
  • 最新機能が必要なら非LTSも検討: 最新の言語機能やAPIを試したい場合は非LTSバージョンが有効ですが、本番環境での利用は慎重に行う必要があります。
  • ライセンスとサポートを考慮し、OpenJDKベースのディストリビューションを選ぶ: Oracle JDKのライセンス変更を踏まえ、Adoptium (Temurin) やAmazon Correttoなど、無償で長期サポートが期待できるOpenJDKベースのディストリビューションの利用を強く推奨します。

この記事を通して、あなたのJavaプロジェクトでのJDK選択に自信を持てるようになり、より効率的で安定した開発環境を構築できるようになることを願っています。今後は、GraalVMのような先進的なランタイムや、クラウド環境におけるJavaアプリケーションの最適化についても記事にする予定です。

参考資料

参考にした記事、ドキュメント、書籍などがあれば、必ず記載しましょう。